「スカイプレミアム」という会員制クラブをうたった投資に、ようやく金融庁のメスが入りました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2021/2021/20210917-1.html
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2021/2021/20211208-1.html
私がこの投資案件を初めて耳にしたのは5年以上前ですので、その間被害者の数・被害総額も増え続けてたことを考えると心が痛いです。投資総額1200億円とのことですが、実際の被害額はもっと大きいと思います。
この種の投資話は、湧いては消え、また少し形を変えて湧いては消え、その繰り返しにもかかわらず、その都度騙されてしまう人々がいます。そして海外を舞台するケースも多いため、「海外投資=怪しい」という一色淡な偏見ができてしまうのも、海外投資をサポートする弊社としては非常に残念でなりません。
騙すことが悪いのは言うまでもないですが、投資する側(騙される側)も、少しの経済知識と理性的な判断ができれば、この種の投資話は充分回避できるはずです。投資は最後は自己責任です。大切なお金を無意味な使い方をしないよう、必要最低限の経済知識を身に付けておきたいところです。
本日は、投資詐欺によくあるキーワードをピックアップしながら、解説していきたいと思います。
(投資案件事例)
- FX(外国為替取引)の完全自動売買で毎月3%を保証し、運用開始から実績として5年以上継続中。だから絶対に儲かると案内された。
- 100万円から投資が可能で、2年後に元本保証もあり。
- シンガポールの銀行口座を無料で開設。デビットカードも発行するので、将来配当をその口座で受け取り、好きな時にいつでも引き出せる。実際に配当を受け取っている人もいる。
- 運用状況は、専用ウェブサイトでいつでも最新時価総額を確認可能。
- 紹介制度により、友達を紹介すると投資金額に応じて手数料がもらえる。
月利3%を出し続けることは可能なのか
株式投資をして期待できる平均実質利回りは、過去実績において7%程度という統計結果がございます。しかしこの7%もあくまで「平均」であり、プラスの月も年も、マイナスの月も年もあった中での平均値です。
株式投資以外に様々な投資テクニックを駆使し、運用リターンを目指す敏腕のヘッジファンドであっても、年利10%以上を設立以降毎年出し続けること、そしてそれを約束することなど絶対に不可能です。
一方今回の案件は、毎月3%リターンですから、年利にすると36%以上です。2年で元本回収できるような投資ですから、確かに魅力的な(もはや異常な)投資案件です。この月利3%というレベルの利回りは、単月で出すことは可能でも、運用開始当初から継続して出し続けること、そしてそれを保証することなど、どんな素晴らしいコンピューターを採用したとしても、現実不可能です。
資産運用は大きく「投資」と「投機」に分類することができると思うのですが、FXは「投機」にあたります。投機はゼロサムゲームで、いわゆる奪い合いです。従って、勝ち続けるためには、必ず敗者が反対側に必要です。
その関係性で成り立っている市場で勝負する際、もしあなたが必ず勝てる自動売買システムを開発したとしたら、見ず知らずの人たちをわざわざ手間かけて募り、一緒に儲けようと思いますか。あなたの儲けを減らす(または勝率を下げる)ようなことを、わざわざするでしょうか。
そして運用の世界で、「絶対」とか「保証」というキーワードは要注意です。何かを保証するためには、それ相当の仕組みがなければいけません。仕組みの説明が曖昧だったり、腑に落ちないときは気を付けてください。また運用母体がはっきりせず、更に運用の中身を開示しないような投資案件も、あまりお勧めできません。自分が理解・納得できないものは、後で後悔しないよう出資前に十分検討されてください。
投資案件の真偽の判定する一つの方法は、あなたがこの案件を運営する側だった場合に、そのスキームが成立するかどうかを考えてみてください。提示されている運用リターンが実際に可能なレベルかどうか、可能ならどういう運用ができるのか、コストが見合うか、報酬が見合うのか、などです。
私はFX投資自体は否定しませんが、あくまで奪い合いなので、自分が儲かった時に、必ずどこかで誰かが損をしているということです。勝った負けたのゲームは楽しいのですが、投資の本質の部分をご理解いただいた上で取引されるようにしていただくのがよいと思っています。
何故元本保証が可能なのか
もしあなたが年利30%を出すことができる敏腕トレーダーだったとしたら、次のどちらを選びますか。
1.金融機関から1億円借りて運用する
2.100万円の投資家を100人集める
どちらも1億円の運用資金が手に入ります。1は金融機関に金利を払うことになりますが、年利30%の収益が出せるのであれば、最近の低金利ですから大した問題ではありません。手続きも借りて終わりですからシンプルですし、返済を催促されるのも金融機関1社で済みます。
一方2ですと、まず投資家を探すのに一苦労です。見つけることができたとしても、投資金のやり取り、事務手続き、人件費、お金のやり取りに必要なライセンスなどやることがたくさんございます。更に万が一運用が上手くいかなかった場合、複数の投資家たちから文句を言われることになりますので、とにかく色々と面倒なことが多くなるでしょう。関係する人が増えれば、手間も費用も掛かるわけです。それでしたらこの際、最低投資金額を1億円にして、一人探す方がよっぽど楽です。
では何故1を選択せずに、面倒な2をわざわざしてまでお金を集めているのか。その答えは簡単です。そうしないとお金を集められない事情があるからに他なりません。
そして日本人は「元本保証」が大好きです。この言葉が付いたとたんに脇が甘くなり、出資してしまう傾向があるようです。むやみにこのキーワードを使ってくる投資案件は、逆に気を付けてください。そもそも元本保証するには、必ず仕組みが必要です。その仕組みを把握せずに、言葉だけを鵜呑みにするのは危険です。
ちなみに投資金100%をFX運用に充てながら、一定のリターンを約束し、更に元本を保証するなど、現存する運用ではまずあり得ないと思っておいてください。もしブラックボックス的なことを謳い開示できないということでしたら、私ならその時点で出資しません。
海外を利用すれば非課税?
投資すると、海外の銀行口座が開設できて、デビットカードももらえるので、投資の配当金はその口座で受け取ることができて、好きな時に日本からいつでも引き出せる、というのも投資案件とセットでよくある話です。全く耳にしたことがない銀行のケースも多いようですが、デビットカードがちゃんとあったりします。
最近の傾向として、海外の大手銀行はマネーロンダリングに敏感で、口座開設は本人が現地に出向いて、面談や身元確認が必要なケースがほとんどです。ですから現地に出向かないで開設ができる銀行というのは、銀行の信用力の問題があるかもしれませんのでご注意ください。
また海外の銀行口座で配当を受け取ると非課税、というのは間違いです。日本居住者は、受け取る場所が日本であっても海外であっても、海外投資で得た確定運用益は、毎年確定申告する義務がございます。(年20万円以下は非課税)
そもそも運用されていないことも・・・
現在の運用状況がどうなっているのかは、いつでも専用のウェブサイトやアプリからIDとパスワードでログインすれば、最新の時価総額が確認ができるようになっているというのですが、そのスマホ画面に見る時価総額が、そもそも本当に運用された結果かどうかは、正直なところ分かりません。いくらでも「演出」はできます。実際上記に紹介した記事では、運用を偽装し、実際何も運用していませんでした。
投資金を誰に入金するかは、真偽の判断材料になります。海外の金融機関(証券会社、ヘッジファンド、保険会社など)は、マネーロンダリングを避けるために、投資家(契約者)からの直接入金でないと投資金の受け付けません。第三者や代理店を介して投資金を入金するような流れは、基本的にはありませんので是非知っておいてください。
配当を受け取っている人が居たりすると、安心してしまう材料になりがちですが、新たに入ってきた投資金と合わせて自転車操業しながら、配当を出し続けることは決して難しくはありません。しかしある程度の規模の資金が集まると、大抵の場合、今まで受け取れていた配当が何らかの理由により突然滞ります。そして連絡がとれなくなり、ようやく目が覚めることになるのです。
紹介料の原資はなにか
お友達を紹介すると、紹介(手数)料が貰える場合があります。販売手数料や紹介手数料が支払われること自体は、マーケティングの一手法としてよくあることなのですが、その仕組みや金額が問題です。あなたが受け取る紹介料は、あなたが紹介するお友達の出資金の一部のはずです。もし紹介料が大きければ、割を食うのはお友達の運用部分ですから、約束するリターンを成立させることが難しくなる可能性があります。
またネットワークビジネス(MLM)として紹介されることもありますが、MLMで金融商品を扱うことは、金融商品取引法で認められていません。ご注意ください。
投資詐欺に遭わないためにー運用のベンチマークを持ちましょう
どのぐらいのリスクをとると、どのぐらいのリターンが期待できるのか、正しいベンチマークを一つ持っておくと、比較がし易くなります。ベンチマークの筆頭は「米国債」です。米国債の特徴は、
- 米ドル建てである
- 運用を担保するのはアメリカ政府である
- 10年貸すと金利は年利2%弱である(2021年)
「世界で最も安全な運用」と言われる米国債が、この程度の運用です。あとはこのベンチマークと比較して、その投資が取るリスクを足し算して、リターンと整合性がとれればよいのです。例えば香港の米ドル建て貯蓄型保険をみてみます。
- 米ドル建て
- 債券投資をメインに株式に分散投資をしながら運用
- 元本を確保できるのは8~10年後
- それより前は運用益はなし(むしろマイナス)
- 上場企業という信用力付き
- 予定利回りは平均で3~5%程度
香港の米ドル建て貯蓄型保険は、米国債よりも信用リスク、流動性リスク、運用リスクを取っています。それらリスクを取った対価として、将来得られるリターンが3~5%というのは、整合性が取れていると言えます。
もしもっとリスクを取れば、更に高いリターンを見込むことができますが、下振れのリスクが上がります。そして逆もしかりです。
例えば円建ての同様の貯蓄型保険であれば、日本国債の金利は米ドルより低いですから、予定利回りは下がることになります。もし更に株式の割合を増やした運用なら、予定利回りは上がりますが、価格変動リスクが上がることで下振れリスクも上がります。もし非上場企業であれば、信用力が下がる分期待できるリターンはもう少し上がるかもしれません。といった具合に、良し悪しを比較するためのベンチマーク(物差し)があってはじめて足し算引き算ができますので、是非正しいベンチマークを意識してみてください。
まとめ
うまい話は投資の世界では有りません。もしもうまい話に聞こえたら、何か見落としているリスクがあるのではないかと、まずはご自身を疑ってみてください。そして正しい判断ができるようベンチマークを意識してみてください。
- 運用や仕組みを理解する:自分で理解できないものへの投資は控えましょう。自分が運営者の立場で、案件が成立するかどうかも考えてみましょう。
- 預けるお金の流れは適切か:投資金の支払先が適当かどうかで、投資の真偽が確認できます。
- 運用のリスクとリターンが適当かどうか:取ったリスクの対価が期待できるリターンです。運用には必ず何かしらのリスクがございます。投資詐欺の場合は、仕組みの問題もさることながら、リターンが見合ってない場合がほとんどです。そのリスクを見誤ってしまったり、過小評価することがないようにベンチマークを意識しましょう。
- 経済知識で武装する:自分のお金は自分で守るしかありません。正しい判断ができるよう、一緒に投資・経済知識を身に付けていきましょう。
もし何かしら投資中のもので、真偽の判断に自信がない時は、遠慮なくご相談ください。長年培った海外投資の知識をもとに、私なりの見解と解説をさせていただきます。
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