株と債券については過去ログでご説明しました。(株についてはこちら 債券についてはこちら)
では資産運用をする時に、債券で運用するのがよいのか、それとも株式で運用するのがよいのか。これに関しては、結論から言いますと、「ひとそれぞれ」となります。
まずそれぞれの、リスク・リターンの関係性について確認しておきます。
債券は、資金を貸した方は、返してもらうことを前提で資金を貸します。資金を借りた方は、返せなければ債務不履行で事業の継続ができなくなるわけですから、何としてでも約束の期日に返そうとするでしょう。(返してもらえないことももちろんあり、それが債券のリスクです。)結果的に資金を貸す方は、過去において実質3%ぐらいの金利をもらえています。(ということは、最近の1%程度の低金利の状況は、お金を借りる側にとっては、平均以下で借りれるまたとないマーケットということができます。)
一方株式に関しては、最悪株券が紙切れになる(出資した会社が破綻する)のがリスクです。出資してもらった方は、資金を返す義務はありませんが、出資してもらった以上、期待に応えようと通常します。経営者が頑張って働くことで、大きなリターンが期待できます。過去統計では、実質7%の収益を株主は貰っています。
株の方が債券より利回りが高いのは、当たり前と言えば当たり前で、出資する方が、貸すより貰いが低かったら、誰も出資を選択しませんよね。
まとめますt、リスクにおいては、債券より株の方が高いです。そしてリターンも債券より株のほうが一般的に高くなります。つまり、
《取ったリスクの対価がリターン》
に他なりません。
多くリスクを取れば、リターンも高くなり、リスクを取らなければ、リターンも小さいわけです。
ローリスク・ハイリターンは残念ですが、運用の世界ではまず有り得ません。もし何かしら美味しい話が舞い込んできたら、その時は、自分が見えていない、気づいていないリスクが背後にあるのではと疑うべきです。ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンはいたって当たり前ということになります。
したがって、債券と株のどちらがよいかという問いには、運用する方が、どれだけのリスクを許容できるのか、どれぐらいのリターンを目指したいのか、運用期間はどれぐらいなのか、どれぐらいの資金があるのかなど、様々な要素を加味した上で、よりどちらのほうがよいでしょう、ということになります。
皆様の今後の運用における参考指標として、ひとつ面白い統計結果を、以前のブログでもご紹介したことがあります、ジェレミー・シーゲル先生の「株式投資」という本からの抜粋します。
過去200年において、株式の利回りと長期国債の利回りを比較した時に、運用期間が5年の場合、株式の利回りが債券の利回りを上回る確率は、74%だったそうです。
これはどういうことかというと、よりリスクを取った株式運用が、26%の確率で、長期国債の利回りを下回り、取ったリスクの対価をちゃんと享受できないことがあるというのです。確かにリーマンショックのような、株式が大暴落するような局面が5年の運用期間に含まれれば、十分にあり得ることでしょう。
ただこれが、運用期間が10年になると、株式の利回りが長期国債の利回りを上回る確率は、82.4%にまで上がります。更に20年の期間であれば95.4%、そして30年では、なんと100%だったそうです。
これら数字からわかることは、運用期間が長くなればなるほど、株式で運用する方が、長期国債で運用するよりリターンが取れる可能性が高い、取ったリスクの対価をしっかり貰うことができるということになります。そして運用期間が30年以上であれば、もはや国債の選択はなく、迷うことなく株式を選択し、しかるべきリターンを取りに行くべきだ、ということです。
この数字を知っていれば、長期運用目的で債券メインの保険契約はあまり得策ではないことがもう判りですね。
ちなにこの数字は過去の統計から出された数字ですから、合理的判断をするのであれば、保険会社に30年以上の長期運用を任せる人は、普通であればいなくなります。(保障はまた別の話ですが)それでは保険会社は困ってしまいますから、そこで最近では、債券だけでなく、株式も織り交ぜて運用をする商品を作ることで、長期契約の獲得をするようになりました。所謂貯蓄性の保険がそうで、以前紹介しているPrudential Hong KongのEGSP2は、まさにそういった商品です。株式の割合を60%織り交ぜることで、長期保有を前提に契約してもらい、最終的に債券以上の利回りが期待できるような設計になっています。
是非皆さんも、ご自身の保険契約や資産運用が、目的に合わせて取るべきリスクをしっかりと取っているか、リターンが取れるようになっているか見直してみて下さい。