資産運用を検討する際、直接ご自身で株式や債券に投資する方法の他に、投資信託を介して投資をするのも選択の一つです。投資信託を組成するファンドマネージャーに投資先を選択してもらうことで、より角度の高い運用が期待できます。今日は、最近日本で販売されている投資信託の状況を調べてみました。
下記リストは、日本で販売されている純資産残高トップ10の投資信託です。(2020年8月24日付)
まず10本全てが株式をメインに運用している投資信託でした。そして10本のうち9本が、日本国内のTOPIX、ないし日経225に連動する投資信託でした。(9位のピクテ・グローバル・インカム株式のみ国際株式に投資しています)
この偏りには少し驚きましたが、ある意味日本の企業、日本の経済にとっては良いことです。日本人が手元の余剰金を、これら投資信託を介して日本企業に出資され、新しい商品開発や企業価値の向上や社会貢献のために頑張ってもらえているわけです。
そしてこれら10本の投資信託にはある共通点がございます。それは、
「配当金が定期的に出る」
ということです。
投資信託によってまちまちではございますが、毎月または毎年、運用によって分配金(配当金)を受け取ることができます。
実は投資信託には、この分配金が出ないタイプのものもございます。(もしくは出ても貰わずに運用継続を選択できるものもあります。)さて皆さまはこの分配金をどう捉えますか。
「定期的にお小遣いがもらえるみたいでありがたい」
「年金の足しになるのでうれしい」
「ちゃんと運用されていることがわかってよい」
など、肯定的に受け取る方も多いと思います。実際これらトップ10以外にも、日本で販売される投資信託の半分以上は、配金が出るタイプです。
定期的にお金がもらえることは、人によっては、毎月の収入の補填、年金の足しにもなります。しかし投資信託に利益が出ていれば、分配金を貰う度に課税されるということ、そして事務的な手間も発生していますので、その分事務手数料も中で支払っています。そういった費用を支払っているという認識がないまま分配金をもらっている方もいらっしゃるかもしれません。また分配金を受け取ることで、元本を取り崩しますので、先に学んだ「複利の力」が小さくなってしまいます。
投資信託を活用する方は、しばらく使わないことが前提の資金を投入しているはずです。にもかかわらず、分配型投資信託は、開始した翌月(翌年)から、資金の一部が(税金や事務手数料が差し引かれて)分配金となって戻ってきてしまうのです。
この分配金は、投資信託により運用の良し悪しに関係なく出るタイプのものもございます。運用が悪い時は、タコが自分の足を食べているのと一緒で、自己資金の元本を取り崩して、分配金を受け取っているに他なりません。
投資信託は、流動性(解約しない)リスクをとり、中長期でプロのファンドマネージャーに運用を任せ、複利の力を使って増やしていくのが本来の利用方法です。ですから海外ではは、分配金が出るタイプの投資信託はほとんど見当たりません。ではなぜ日本で販売されている投資信託の大半が、分配金が出るタイプかというと、
・分配金を喜ぶ投資家がたくさんいるから
・販売する側は手数料が徴収できるから
です。みなさんが儲けるために投資するべきであり、金融機関を儲けさせる必要はございません。
海外では投資信託は長期投資が当たり前
参考までに、下記は2019年アメリカで最も売れたミューチュアルファンドトップ10です。アメリカでは、一般投資家が購入できる投資信託のことをミューチュアルファンド(Mutual Funds)と呼びます。
この10のファンドのうち、Dodge & Cox Stockの2つのファンドだけが、四半期ごとに配当をもらうことができるタイプでした。
海外と日本の投資信託の違いに、分配金の有無と併せて、ファンド寿命も大きな違いがあります。日本では短期売買の方が多いので、投資信託から資金がすぐ引き上げられてしまうため、運用が短命になりがちです。一方海外では、多くの投資家が長期戦を前提にファンドに資金を投入しますので、組成後数十年といった長寿ファンドがゴロゴロしています。
1位のVanguard Dividend Growth Fundは1992年設立で、すでに28年運用されているファンドです。そして5位のFidelity Contrafundは1967年に、8位のDodge & Cox Stockは1965年に組成されたファンドで、50年以上も運用されています。日本では、これほど長寿のファンドを取り扱っている証券会社は、まずないと思います。日本の証券会社も、こういった長寿ファンドを多く取り扱うようになれば、長期運用を前提とした資産形成への意識が高まってくるのかもしれません。