資産運用の方法として、最も簡単で多くの方がされているのが定期預金だと思います。意識されているかどうかは別として、定期預金も立派な資産運用です。
しかし日本の円建て定期預金はご存じの通りの低金利ですので、いくら銀行の定期預金に入れておいても、ほとんど増えることはありません。
少しでも増やしたいという思いで、次に資産運用の候補にあがるのが、最近の傾向ですと「米ドル建ての貯蓄型保険」を運用目的で契約される方が増えているようにお見受けします。一定期間置いておくことで、円建て定期預金より金利が高いため確実に増えるし、契約先が大手保険会社なので安心だというのが主な理由です。
しかし円建て定期預金の代替として、米ドル建て貯蓄型保険で運用しようとすることは、本当に正しい選択なのでしょうか。
まず結論から申し上げますと、円建て定期預金と、米ドル建て貯蓄型保険を比較しても、通貨が違いますので、為替を考慮する必要が出てまいりますので、比較がとても複雑になります。米ドル建て貯蓄型保険の良し悪しを比較したければ、他の米ドル建ての運用と比較するほうが分かりやすいです。
今後皆様が米ドル建ての運用を検討する際には、是非知っておいていただきたい運用がひとつあります。それは、
「米国債での運用」
という選択肢です。なかなか一般の方が、直接債券で運用するという考えには至りにくいかもしれませんが、個人投資家がネット証券を通して株式の売買ができるのと同様に、債券の売買も簡単にできます。
米国債がどういったものかを知っておくことで、今後米ドル建ての運用を検討する際に、間違った資産運用の選択を避けることができるようになります。
1 信用力と利回りの比較
米国債に投資をするということは、アメリカ政府にお金を貸すことを意味します。米国債10年物を購入すれば、10年間アメリカ政府にお金を貸し、10年後に元本と約束された金利を返して貰おうとすることです。満期時の元本と金利を保証してくれるのは、アメリカ政府です。
米国債での運用の場合、満期日に約束したお金を返して貰えないことが投資リスク(信用リスク)です。しかしアメリカ政府が、国の破綻を意味する「債務不履行」という選択をすることは通常では考えられませんし、そもそも自国通貨建ての債券ですから、最後はお金を刷ってしまえば必ず償還できますので、つまるところ債務不履行の可能性(信用リスク)とは、限りなくゼロに近いと言えます。
一方保険会社の破綻も、めったなことでは起きませんので、保険商品の契約に伴う信用リスクも低いとは思いますが、一政府と一保険会社の信用リスクの比較であれば、当然国の破綻リスクの方が低いのは明らかです。
次に米国債の金利ですが、最近は新型コロナの影響でだいぶ下がってしまいましたが、少し前までは、10年物債券で3%ぐらいは貰えておりました。(グラフ参照)
一方日本の米ドル建て貯蓄型保険の実質利回りは、商品にもよりますが1%前後のものがほとんどです。
従って、
【信用リスク】
米ドル建て保険 > 米国債
【金利】
米ドル建て保険 < 米国債
信用力・安全性が高いのは米国債、そして利回りがよいのも米国債です。
2 流動性の比較
次に流動性を観てみます。
保険商品は、一般的に契約した時点で、満期までの長期運用が前提です。長い保険契約ほど利回りが高くなるのは、保険会社がより長期の債券(利回りが高い債券)で運用ができるからです。
にもかかわらず満期前に解約するとなれば、保険商品の場合は早期解約手数料というペナルティが契約には必ず発生し、大体の場合で元本割れは免れません。
一方債券ですが、世界の市場で様々な債権が毎日売買されています。その中でも最も売買が盛んな債権のひとつが米国債です。従って、いざ現金が必要な場合、市場で売却さえできれば、満期前までもすぐに現金化できてしまうのが債券です。購入時と売却時での価格変動分の利差益はありますが、保険の早期解約手数料ほど損をすることはまずないでしょう。
総合評価
以上、信用力、利回り、流動性の点のどれをとっても米国債の方がドル建て貯蓄型保険より有利な結果となりました。ということは、日本においては、ドル建て貯蓄型保険に加入して運用するぐらいであれば、証券口座を開設し、ご自身で米国債を売買する方がよいということです。
ここで賢明な方はお気づきかもしれません。
運用とは、「取ったリスクの対価がリターン」でしたから、本当であれば、日本の米ドル建て貯蓄型保険は、米国債よりもリスクが高い分、利回りも高いはずです。しかしそうなっていないということは、その商品自体が「取っているリスクに見合ったリターンが貰えていない」、理にかなっていない商品と言わざるを得ません。
台湾居住のメリット
日本では、ドル建て貯蓄型保険より米国債で運用する方がリターンが高い、との結果でしたが、台湾に在住されている方は、選択肢が増えます。それは、
「海外で保険手配が可能」
だということです。
台湾から飛行機で1時間の「香港」には、日本のものとは比較にならない高利回り(米国債より高い利回り)の米ドル建て貯蓄型保険が手配可能だからです。
実のところ、香港の保険商品の利回りは、「高利回り」ではなく、「適正利回り」という方が正しいかもしれません。何故なら上記で比較しました通り、米ドル建て貯蓄型保険は、米国債より信用リスクも流動性リスクも高いわけです。取っているリスクが高いのですから、利回りも高くなるのは当たり前です。
日本居住者は、保険業法という法律によって、海外の保険契約が許可制になっています。保険業法186条において、日本居住者が海外で保険を手配する場合は、金融再生委員会の許可をもらう必要があります。しかし過去において許可を貰えた方はいらっしゃらないそうです。ですから日本居住者ですと、海外で保険契約は難しくなります。
しかし台湾駐在されてらっしゃる方は、契約時にこの日本の保険業法は該当しませんので、香港の米ドル建て貯蓄型保険が契約可能であり、その門戸を開いている保険会社が何社かございます。あくまで日本に帰国される前の、台湾駐在中のみのチャンスということになります。
是非台湾にいらっしゃる今のうちに、将来のための資産運用、保険の見直しなどされて、香港の保険も勉強されてみてください。新型コロナの影響で、今なら香港に渡航しなくても手配が可能な保険もございますので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。