香港米ドル建て貯蓄型保険-予定解約返戻金の仕組みを解説します

予定解約返戻金は運用次第で変動

香港の米ドル建て貯蓄型保険は高金利が魅力的な運用商品です。将来の予定解約返戻金は保険会社の設計書で確認できますが、実際の運用次第で変動するのが一般的です。本日はその解約返戻金の仕組みについて解説したいと思います。

例として、サンライフ香港のサンジョイグローバルの設計書から抜粋して見ていきます。

まず予定解約返戻金は英語で”Surrender Value”です。設計書の一番右端のTotal (A+B+C)が経過年数ごとの予定解約返戻金です。

予定解約返戻金(Surrender Value)= (A)+(B)+(C)

では次に(A),(B),(C)をそれぞれみていきます。

(A) : Guaranteed
(B) : Accumulated Reversionary Bonus(リヴァーショナリーボーナス)
(C) : Accumulated Terminal Bonus(ターミナルボーナス)

(A): 保証分 (Guaranteed) は、サンライフ香港が契約者に必ず支払うことを保証する金額です。設計書に記載された金額は、満期までの期間中変更されることはありません。貯蓄型保険の運用資産は債券と株式に分散されていますが、この保証分は利確した債券運用の収益で賄われています。サンジョイグローバルの場合、保証分が元本に到達するのは契約から13年経過後となっております。

(B): リヴァーショナリーボーナス (Accumulated Reversionary Bonus) は、非保証の変動する配当金・利息ボーナスです。株式運用の実績が反映されるため、金額は変動します。したがって、必ずしも設計書通りの金額にはなりません。毎年1年間(通常4月1日から翌年3月31日まで)の運用実績に基づいて決定・更新されます(毎年発行される運用報告書で確認できます)。ただし、一度獲得したリヴァーショナリーボーナスは、翌年以降下回ることはありません。

(C): ターミナルボーナス (Accumulated Terminal Bonus) も、リヴァーショナリーボーナス同様に非保証の変動する配当金・利息ボーナスです。毎年の運用実績に基づいて決定されます。リヴァーショナリーボーナスは一度獲得すると翌年以降下回ることがないのに対し、ターミナルボーナスは毎年の運用実績を直接反映するため、前年度を下回る可能性があります。

サンライフ香港は、リヴァーショナリーボーナスとターミナルボーナスの2つの変動要素を、下記の通り定義しております。

The Reversionary Bonus and Terminal Bonus are non-guaranteed and are determined in accordance with the rules set out by Sun Life Hong Kong Limited from time to time. The Reversionary Bonus and Terminal Bonus may vary based on the performance of a number of experience factors, with the investment return normally being the main determinant. Other
factors include, but are not limited to, claim experience, policy expenses, taxes, and policy owner termination experience.
The cash value of Reversionary Bonus and Terminal Bonus might not be equal to their own face value. For details of bonuses, please refer to Bonus Philosophy under section Important Information and Sun Life Hong Kong Limited’s website (www.sunlife.com.hk).+

翻訳

リヴァーショナリーボーナスとターミナルボーナスはサンライフ香港の非保証項目で、同社の規定に基づき決定されます。これらのボーナスは、多くの経験的要因や運用実績などに影響を受け変動する可能性が高く、投資収益率を主要な決定要因としています。影響要因には保険金請求、契約費用、税金、契約者の解約などがあります。

ボーナスの現金価値は額面価格と乖離することもあります。詳細はサンライフ香港の重要事項説明やウェブサイト(https://www.sunlife.com.hk)のボーナス方針をご確認ください。

この解約返戻金の定義は、「サンジョイグローバル(SunJoy Global)」以外の米ドル建て貯蓄型保険「ヴィクトリー(Victory)「ステラ(Stellar)」「サンジョイ(SunJoy)」「ヴィーナス(Venus)」などにも当てはまります。

また保険会社によって非保証分の呼称が違います。

運用達成率(Fulfillment Ratio)

受け取る解約返戻金は、2つの非保証分、リヴァーショナリーボーナスとターミナルボーナスの運用結果によって変動しますが、実際にどの程度達成できたかは、「運用達成率(Fulfillment Ratio)」として各保険会社のウェブサイト上で一般に公開されています。運用達成率は、運用開始年、運用通貨、保険料支払回数、保険商品により異なります。

非保証ボーナスの呼称は保険会社により異なりますが、貯蓄型保険の予定解約返戻金は、保証分と2種類の非保証ボーナスから成ることがほとんどです。

保険会社保証分非保証分①非保証分②
サンライフ香港GuaranteedReversionary BonusTerminal Bonus
FWD香港GuaranteedAnnual DividendSpecial Bonus
プルデンシャル香港GuaranteedReversionary BonusSpecial Bonus
YFライフ香港GuaranteedDividends and InterestTerminal Bonus
保険会社名をクリックすると各社の運用達成率ページに移ります。

契約者の立場から見れば、設計書の数値を上回る運用リターンを望むでしょう。しかし保険会社は、大きな経済変動がない限り、運用達成率100%、つまり設計書通りの運用を基本方針としています。そのため、設計書の予定を上回る利益が出ても、すぐに全額を契約者に還元せず一部をプールしておき、予定を下回る場合に補填するといった調整を行ったりします。これをスムージング(Smoothing)と呼びますが、こういった手法を用いることで、最終的に長期で設計書通りに落ち着くのが一般的です。

保険会社・保険商品によって利回りが違う理由

市場に出回る貯蓄型保険の利回りは、提供する保険会社や保険商品によって異なります。その最大の要因はリスクの違いです。

例えば、S&P信用格付けAAとBBBの保険会社が、全く同じ利回りの貯蓄型保険を提供していたとしたら、大抵の方が格付けAAの保険会社の貯蓄型保険を選択されるでしょう。なぜなら、格付けAAの保険会社の方が信用リスクが低く安心だと思うからです。ですから格付けBBBの保険会社は、格付けAAの保険会社より信用リスクを取ってもらう見返りとして、より高い利回りを約束しなければ契約を勝ち取れません。

利回りの違いは、信用リスク以外にも、流動性リスク、運用リスク、カントリーリスクなども反映しています。したがって、予定利回りの良しあしだけで判断するのではなく、リスクの内容を理解した上で商品選択することが大切です。

まとめ

最近では、日本の保険会社も米ドル建ての貯蓄型保険を取り扱うようになりましたが、金利水準は香港とは異なります。機会があれば、ぜひ日本でも見積りを取って比較することをおすすめします。

貯蓄型保険は短期での高リターンを期待できませんが、長期運用では安定したリターンが見込める運用商品です。老後資金や教育資金の準備として、自助努力による年金づくりに適した優れていると言えるでしょう。

ご不明点や商品の詳細については、お気軽にお問い合わせください。

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