2020年度の保険料収入ランキングにおいて、日本はアメリカ、中国に次いで世界第3位でした。日本人が保険好きと言われる所以かもしれませんが、実は台湾は同ランキング世界第10位で、台湾人も日本人同様保険好きな国民のようです。台湾の街中でも保険会社の看板はよく見かけます。本日は台湾の保険会社と保険事情を掘り下げてみたいと思います。
「保険局」が保険業界を監督
保険業界の規制及び監督は、かつては財務省(Ministry of Finance)管轄でしたが、2004年7月1日、台湾の金融市場および金融サービス企業の開発、監督、規制、および調査を担当する管轄当局として、金融監督管理委員会(Financial Supervisory Commission(FSC))が設立されました。FSCは、証券先物局、銀行局、保険局、財務審査局の4つの局に分かれており、保険局( Insurance Bureau)が保険業界の監督・管理を管轄しております。
現在の保険局トップは、Ms. Chiung-Hwa Shihという女性です。台湾は総統も女性の国ですから、有能な女性が要職で活躍できる環境が整っているようです。
保険局は更に以下の4つの課に分かれております。
一般監督課
保険証券、保険詐欺防止、消費者保護、保険リテラシーの維持、国際保険業務および保険代理店、ブローカーおよび調査員など一般的な保険に関する監督・管理を担っています。
生命保険監督課
生命保険会社の財務および事業状況の監督と管理、生命保険商品のレビュー、新しい生命保険商品の宣伝と管理、生命保険会社の買収と合併、労働年金制度、保険クレームを担当しています。
損害保険監督課
強制自動車責任保険、住宅地震保険、損害保険、企業統治、損害保険商品、新しい損害保険商品、および保険グループの監督と管理を担っています。
財務監督課
保険数理統計の規制の計画と策定、ソルベンシーシステム、保険数理システム、保険会計システム、保険財務および事業報告、保険基金を扱っております。
台湾の保険会社数
台湾では、国内企業・外国企業合わせて53社の保険会社が営業しており、損害保険会社が23社、生命保険会社が27社、再保険会社が3社です。(2021年7月時点)
種類 | 国内保険会社 | 外国保険会社 |
---|---|---|
損害保険会社 | 17 | 6 |
生命保険会社 | 23 | 4 |
再保険会社 | 3 | - |
台湾-日本-香港の比較
日本の保険会社数は、損害保険会社が55社、生命保険が42社で併せて97社で、台湾の約2倍です。(2021年10月時点)しかし人口比でみると、台湾の人口は日本の約5分の1ですから、台湾マーケットの方がより業界の競争は厳しいと言えます。
ちなみにアジアのオフショア金融センター・香港では、人口750万人に対し144社の保険会社が競争しています。台湾と比較すると、約3倍の保険会社が、約3分の1のマーケットで顧客を取り合うのですから、香港の保険会社は更に厳しい競争に晒されていると言えます。(下記参照ください)
国名 | 損害保険会社数 | 生命保険会社数 | 合計 | 総人口(人) | 総人口 ÷ 保険会社数 |
---|---|---|---|---|---|
台湾 | 23 | 27 | 50 | 2,357万人 | 471,000人 |
日本 | 55 | 42 | 97 | 12,512万人 | 1,290,000人 |
香港 | 91 | 53 | 144 | 748万人 | 52,000人 |
香港は非居住者向けのサービスも展開しており、実際のマーケットボリュームは人口以上と言えますが、厳しい競争に晒されることで、結果的に消費者に有利な保険商品が多くなるのは必然です。日本は残念ながら業界内において厳しい競争原理が働いていない気がします。
台湾の保険料収入
台湾の保険料収入は、生命保険が損害保険よりも大きなマーケットです。
Year | 保険料収入合計 | 損害保険 | 生命保険 | 保険料収入比率 損保vs生保 |
---|---|---|---|---|
2005 | 1,576,252 | 118,502 | 1,457,750 | 1 : 12.3 |
2010 | 2,418,654 | 105,805 | 2,312,849 | 1 : 21.8 |
2015 | 3,062,796 | 136,119 | 2,926,677 | 1 : 21.5 |
2020 | 3,352,076 | 188,111 | 3,163,965 | 1 : 16.8 |
参考:日本の保険料収入は、損害保険が1,200億ドル、生命保険が2,900億ドルです。(2020年)
保険代理店と保険ブローカー
保険を販売するのは、代理店とブローカーです。どちらも保険会社と顧客の仲介という立場は一緒ですが、通常代理店は保険会社の代理として、ブローカーは顧客の代理として保険の仲介をします。 念のため補足ですが、保険契約する際、保険の条件が一緒であれば、代理店とブローカーのどちらを介してお申込されても支払う保険料は変わりません。
台湾の代理店・ブローカー数、それぞれの営業マンの数は下記のとおりです。
種類 | 損害保険 | 生命保険 | 損保+生保 | 合計 | 損害保険営業マンの数 | 生命保険営マンの数 | 営業マン合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
代理店 | 194 | 70 | 28 | 292 | 102,284 | 83,636 | 185,920 |
ブローカー | 47 | 125 | 311 | 483 | 54,414 | 85,230 | 139,644 |
台湾の保険マーケットでは、損害保険と生命保険の両方を取り扱うブローカーが最も多く311社です。しかし営業マンの数では代理店が多いです。結果的に保険料収入も代理店の方が大きくなっています。
種類 | 損害保険 | 生命保険 | 保険料収入 |
---|---|---|---|
代理店 | 56,406,793 | 905,088,955 | 961,495,748 |
ブローカー | 32,955,430 | 295,125,417 | 328,080,847 |
保険浸透率
保険浸透率とは、 GDPに対する保険収入保険料の割合で、この数値が高いほど国民の保険への指向が強いものと考えられています。一般的に先進国の保険普及率は平均9.6%、新興国市場は平均3.3%と言われておりますので、台湾は先進国の中でも平均を大きく上回る、世界第2位の高い浸透率です。
保険密度
保険密度とは、国民一人当たりの平均保険費用を指します。台湾は世界第11位で、保険浸透率同様、保険に対する意識は高いと言えそうです。
保険浸透率、保険密度をみてわかる通り、保険は台湾人にとても馴染みがあるものとなっているようです。(もしかしたら日本人以上ですね。)
次回は台湾駐在日本人の皆様が、台湾の保険とどう付き合い、どのように適用できるかを見ていきたいと思います。
(当ページの資料は台湾保険局の「中華民国 保険市場重要指標」(2021年7月)から参照しております。)