インフレを目指す中央銀行
インフレーションとは、物価上昇のことです。そしてターゲットは目標を意味しますので、インフレターゲットは、物価上昇目標となります。
インフレすると、モノが値上がりします。同じお金で買えるものが少なくなるということは、お金の価値が減少したことを意味します。
実は、多くの先進国の中央銀行は、一定のインフレを目標として金融政策を行っています。日本も多分に漏れず、現在は明確なインフレ目標を掲げています。
2013年1月22日、金融政策決定会合(金融政策の運営に関する事項を審議・決定するの会合)において日本銀行は、「物価安定の目標」を中心的な物価指標である消費者物価の、前年比上昇率で2%とすることとしました。
参考資料: https://www.boj.or.jp/mopo/outline/qqe.htm
日本銀行は、物価が毎年2%ずつ上がっていくよう様々な金融政策を行っていく、と言っています。ここで言う「安定」は、物価が上がらない、ことではなく、安定的に上下ていくことを意味しますので注意してください。これは、今日100円のジュースは来年102円に、再来年は104円に、翌年は106年に・・・といった具合に物価が上がっていくことを目指しているということです。
何故国民がうれしくない物価上昇を目指すのか
消費者の立場からみれば、モノの値段が上がるのはあまりうれしくないですよね。でも私たちの中央銀行はそれを望んでいると言います。なぜなのでしょうか。
まず最初に、次の質問で、どちらか購買力の点でよいか選択してみます。
質問1
Q:1年間で
①収入が1%下がるのと、
②収入が1%上がるのでは
どちらがよいですか。
A:多くの方は、②を選択します。収入が増えたほうが購買力が上がり、より多くのものが買えるからです。
質問2
Q:1年間で
①物価が2%下がるのと、
②物価が2%上がるでは
どちらがよいですか。
A:多くの方は、①を選択します。モノの値段が上がるより下がった方が、より購買力が上がると考えるからです。
質問3
Q:質問1と2を混ぜます。1年間で
①収入が1%下がり、物価は2%下がるのと、
②収入が2%上がり、物価は1%上がるのでは
どちらがよいです。
A:多くの方は①を選択すると思います。何故なら、①は収入が下がり残念ですが、その間世の中の物価はもっと下がりましたので、結果的に購買力は少し上がりました。一方②は収入が上がり嬉しいのですが、世の中の物価は収入以上に上がりましたので、結果的に購買力は少し下がりました。そのようにみると多くの方が①を選択するでしょう。
質問4
Q:1年間で、
①収入も物価もそれぞれ2%下がるのと、
②収入も物価もそれぞれ2%上がるのでは
どちらがよいですか。
A:この場合、数字上それぞれ上がった分と下がった分が一緒なので、お互い相殺され①も②も購買力は変わらないと言えます。では最後に質問を少し変えます。
質問5
Q:質問4の①と②の状況において、人々がよりお金を使いたくなるのはどちらでしょうか。
この答えは、②です。人々は収入も物価も2%あがる方が、よりお金を使います。
理由は以下の通りです。
まず①ですが、収入が減ると、将来に対する不安から消費活動を抑えます。財布のひもが固くなり、我慢もするでしょう。モノが売れませんので、企業収益が上がりません。よって給料も上がらない…といった負のスパイラル、不景気がこの状況です。売れないので安くする、そうして物価は更に下落します。これをデフレーション(デフレ)といい、過去20年の日本が正にこれです。
次に②ですが、収入が増えると、増えた余力から消費活動が活発になります。財布のひもも緩みがちになり、買わなくていいものまで買ってしまったりすることも。モノが売れれば企業収益は上がります。賃上げ・ボーナスもでるでしょう。モノが売れますので、需給バランスから物価は上がります。これがインフレーション(インフレ)です。モノが売れるので、工場を拡大し増産すれば、そこには新たな雇用も生まれるでしょう。そして新たな雇用は、新たな消費に繋がります。
①と②のどちらがよいでしょうか。やはり②の方が皆にとって良い循環ですよね。中央銀行が目指しているのは、まさに②なのです。
少しずつ物価が上がる(インフレする)ような経済状況は、景気をよくし、雇用や社会を安定させるのです。ですから個人レベルではあまりうれしくない物価上昇を目指すのです。
日本の金融政策が、物価上昇目標を達成できるかどうかは別として、現在の日本がインフレ2%を目指している以上、私たちは保有する資産を少なくとも2%以上で運用ができなければ、それは将来資産の目減りを意味するということをまず押さえておきつつ、どういった資産運用ができるか考える必要がありそうです。
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